フィンランドデザインはつかみどころが分からない★アルヴァ・アアルト もうひとつの自然展(TSG)310224
東京ステーションギャラリー(TSG)で開催中の
「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」展に行ってきました。
展示室内は写真禁止だったのでこれのみ。
全体的にはスケッチや模型が多かった。
彼自身の家のためのデザインや、友人夫婦のために作った家などの写真も見ることができた。建築家の個人住宅好きなのでうれしい。アアルトの建築はとにかくアッサリしていて、つるんと美しく、アクが少ない。
そのくせどの写真を見ても、何かが潜んでいるような、物語が始まりそうな、「絵になる」構図があるのはなんでなのだろう。
インテリア用品のデザインも多く手がけており、それらは実物を見ることができた。
年代的には1900年初頭。
シンプルながら曲線を多用し、日常生活に溶け込みそうなやさしいデザインの明かりや椅子(アアルトといえば椅子)は、モダンで当世風。フロアはまるで家具屋さんのよう。
イッタラの食器や花器もあった。というか、イッタラで良く見るあのなみなみ模様のグラスは、アアルトの妻アイノ・アアルトのデザインだったのね。
このなみなみは水面に浮かぶ波紋を表わしているのだそう。
お皿がなみなみしているのもあって、そちらはカルパッチョとかフルーツ盛り合わせとかを載せたらおいしそうな涼やかさだった。
建物だと、「パイミオのサナトリウム」が一番惹かれたかな。
サナトリウムの一室を再現した小部屋もあった。
ターコイズブルーとホワイト、クリーム色が主体の内装は、病院らしい清潔さと落ち着きを持っていながら、穏やかな組み合わせでもあるので、弱っている患者たちの気持ちを和ませただろうなあと思う。
昔は結核といえばサナトリウムに入り、日光浴をしたりきれいな空気を吸ったりして養生することが治療だったらしい。
わたしは結核患者ではないが、こんなきれいで落ち着いた建物の中で日光浴をしたり本を読んだりして日頃の心の垢を落としたいなあ。…あ、それは日本では湯治っていうんだったっけか…。
他には、彼の手がけたフィンランドの公会堂や図書館などのけっこう大きめの模型を見ることができる。図面なども一緒に見られるけど、素養がなく読めないのが建築関係の展示ではいつもはがゆく感じる。。
まとめ
鑑賞時間に余裕がなく、わずか30分ほどの鑑賞でしたが、フィンランドの建築やデザインに対する見方が少し変わった。
今まではかわいくてシンプル、シュッとしておしゃれとか、ヨーロッパでありながら木を多用する、手触りの柔らかそうな建築が多い、とか、そんな茫漠としたイメージでしたが。
なんというのか、彼の建築もプロダクトデザインも、構成要素がとても少ない。
面と、それらをつなぐ曲線や直線。色数も派手ではない。
そのことが、使う人や住む人に対してすごく穏やかに作用するのではないか…彼のデザインした椅子を部屋に置いた時、彼の設計した建物に入った時、きっとすごく心がのびのびとして落ち着くんじゃないかという気がした。
作品に多用される曲線を有機的とキャプションでは説明していましたが、どちらかというと幾何学っぽいタイプの有機性だなと感じた。オウムガイの貝の巻き方や、トナカイの角の分岐、緩やかで規則的な寄せる波の形とか、静かに自然界の秩序を保っているような有機的規則性。
(曲線といえば、数年前に現代美術館で見たオスカー・ニーマイヤーの展示を思い出すけど、そちらはもっともっと生っぽくて、生き物の柔らかい肉が波打つようなしなやかさがあった。おなじ曲線でもずいぶん性格が違うなあ)
けばけばしい色の小物を並べたり、ごちゃごちゃした主張の激しいインテリアを部屋に置くと、気持ちが落ち着かなかったり、集中できなかったりする。その場所にいる間の意識の主導権を握られてる感じ。アアルトは、「人々の暮らしをより豊かにする」ことを信条としていたそうだけれど、快適な空間で、周りのものや建物にやさしく包まれながら暮らすことは、自分の意識が気持ちよく自分の中にぴったりと収まっている状態を作りあげてくれるのかなあ、などと考えたりした。