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たえまない対話の向こうに:国立西洋美術館『自然と人のダイアローグ』展

■東京暑すぎない???

国立西洋美術館で開催中の「自然と人のダイアローグ」展を見に行きました。

6月なのに異様な陽気のなか、汗をかきかき鑑賞に行ったところ、涼を求める観覧客で会場はやや混雑してました。

客層は見た感じバランスよく、年嵩の夫婦もいれば若いカップルもいたり。

西洋美術館の客層っていつも安定してていいよね。

 

 

半分くらいが自館のコレクションだからか、企画展にはめずらしく写真撮影OK

 

人は絵画を通して自然をどう表現してきたか?

自然という一番身近なモデルに対して、どういう思いで向き合ってきたか?

という問いに、主に印象派前夜あたり~ポスト印象派あたりの作品群(同時代の、ウィーン分離派青騎士グループも)を軸にして答えているかんじ。はじめから終わりまで鑑賞していると、自分よりもはるかに大きく、古く、美しい、自然というモデルに対しての画家たちの意識や距離感、畏怖や憧れや、あえての無関心!などの、様々に抱えていた感情が垣間見れる。

 

■目で感じるリズム感

結構好きだなーと思うのはこのあたり。

自然には本来ない「視覚上のリズム」を意識し、たぶんフィクションだろうなという構図を作っている。

本来人間の意志が介在しないはずの「自然」のありように、作為を反映させて、思い通りの姿にしてしまうところに、近代人意識っぽさを感じる。

モーリス・ドニ《踊る女たち》1905年、国立西洋美術館

 

こっちは常設展にあったもの。

やっぱりこういうテイストの絵に惹かれるらしい。

これも、居並んだ女性たちの配置にリズムを感じる。

ポール・ゴーガン《水浴の女たち》1848年、国立西洋美術館

 

モネの「舟遊び」とリヒターの「雲」が並べて展示してある区画もあった。

 

「舟遊び」では、空は単なる水面の反射として描写されている。

「雲」では、写真をそっくりなぞって描くことで、創作から作為や人為を排除しようとしているのだろうか。

どちらも、現れているのは同じ「空」なのに、「空」そのものを描こうとしているわけではないのかな、と考えたりした。

彼らにとっては、自然は「えがく対象」じゃないのかも…

2作品が殆ど100年離れて制作されているのも面白いと思う。

クロード・モネ《舟遊び》1887年、国立西洋美術館

ゲルハルト・リヒター《雲》1970年、フォルクヴァング美術館蔵

 

■光をえがく

ポスト印象派、点描とか苦手だったのに、いつの間にか「きれいだな~」と思うようになった。

画題は結構ふつうなのに、実は超絶理論派。とか、努力を見せないタイプ。

 

柔らかく降る月光の表現がロマンティックだ。

点描のような細かい描法だからこそこのニュアンスが出るのかもなー

 

テオ・ファン・レイセルベルヘ《ブローニュ=シュル=メールの月光》1900年、フォルクヴァング美術館蔵

 

これはふつうに光、特にうすべったい水面に走る光の捉え方がいいなっと思った。
カイユボットの「床を削る人々」に似てる。

 

アクセリ・ガッレン=カッレラ《ケイテレ湖》1906年国立西洋美術館

 

「床(または地面、水面)が鏡のように光っている」絵がすきなんだな、わたし。

 

■ところで

終盤のほうにゴッホがいたー----!!!!!

フィンセント・ファン・ゴッホ《刈り入れ(刈り入れをする人のいるサン=ポール病院裏の麦畑》1889年、フォルクヴァング美術館蔵

 

昔はゴッホの暑苦しい絵面が苦手だったけど、いまは大好き。

(昔はただ暑苦しかったブルーハーツが何故かめちゃくちゃ心に沁みるようになったことと、事象は全然違うが、無関係とは思えない。笑)

ゴッホの絵を見ていると、画家自身が絶えずキャンバスの前で対象の生命感や湧き上がるエネルギーのたけだけしさに、おののき、憧れていたのではないかと思えて仕方がない。

どうにかして、眼前のこのエネルギーのうねりや奔出をキャンバスに閉じ込めたい!という祈りというか願いというか、、そんな強い思いが、この波打つ油絵具に乗っているように思われる。

そう考えると、ちょっとはた迷惑でいまいち空気の読めなかった男ゴッホが、なんだかとてもけなげに見えてしまうのだ。。

 

■まとめ

好みの絵が多く、出展数も多くて見ごたえある展覧会でした!

リヒターのああいう絵は初めて見たな… 絵具をベターーッとやる(?)絵しか知らなかったからそういうのばっかりの作家かと…

今国立近代美術館でやっているリヒター展も見に行けばよかった。。

めちゃくちゃ混んでるらしいが。。

今回は日程に余裕もあり、結構しっかり見て回ることもでき、満足度が高め。

常設展もゆっくり回ったの久しぶりだ…!